ハツカネズミに恋をする (ページ15/16)
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僕の瞳孔は驚愕に軽く開いていただろう。
だって全然予想してなかったことだから。

こんなにせわしなくて落ちつかない名無子が、僕より年上って。

正直見えない。
でも、それも含めて名無子か、と思えてきた。
話は聞かない、落ち着きはない。
だからおかしな失敗をして、あたふた慌て、その姿は回し車の中で走るハツカネズミのよう。
そして、真っ赤な瞳でこの世界を見つめ、僕には予想できない言動を見せるから。
思わずずっと眺めていても飽きないなんて思ってしまう。
なんだか変なのに会ってしまった。
こんなのに惹かれたらきっと苦労するんだろう。
だけどもう仕方ないか。
会ってしまった。
興味を持ってしまった。
大変なのはわかってるのに、僕はきっと目を離せなくなるだろう。
ハツカネズミみたいなキミから。

名無子、キミから――。

僕は内心、途方にくれた思いで、そっと後頭部に手をあてた。
指先に触れる短い髪。
目の前にはキミ。

「……まいったな」

赤い目をしたキミに向かって、僕は静かに呟いた。





end.
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