ハツカネズミに恋をする (ページ14/16)
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僕自身、超獣偽画の術でネズミをよく使うのはその役立つ性質のほかに、好ましいと感じているからでもあるんだろうし、あの術では墨で描く以上、ハツカネズミは表現できないけれど、もし彩色可能なら白くて赤い目のハツカネズミもいい。
もっとも侵入、探査に出るネズミは黒いほうが闇にまぎれて利用価値が高いだろうから実際的には難しいか。
僕はレジャーシートの上に立ちあがって、頭からかぶったビニル袋を軽くはたいた後、窓のほうへと足を向けた。
部屋の中では名無子が慌てふためき、風に飛ぶ髪の毛や床に落ちたそれを集めている。
僕はカーテンの揺れる窓際に近づき、ガラス戸をカラリとスライドさせた。
窓が閉まる。
それと同時に室内に入り込む風量がパタリと減った。
アッと名無子が動きを止めて、僕のほうを振り向いた。

「窓を開けてたら風が入って切った髪の毛も飛んでしまうよ。だから窓は閉めたほうがいい」

照る照る坊主姿の僕を見て、名無子が腕を組んだ。

「賢いなぁ、サイくんは。アンコ先輩の言った通りだ。私のほうが年下みたい」

え?
私のほうが年下みたい?

ようやく言えた窓のことも、それに対する名無子の返事が相変わらずずれてるとか、そんなことは簡単に頭から飛んでしまった。

「もしかして、名無子って僕より年上なの?」
「なによ、いまさら。私はサイくんより正真正銘、年上です」

名無子が胸を張るようにして赤い目を輝かせた。



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