ハツカネズミに恋をする (ページ3/16)
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声から想像はついていた。
目を吊り上げてやってきたのは僕も一緒に任務に出たことのある、みたらしアンコさんだ。
黒髪を振りみだしながら僕の前に駆け寄ると、アンコさんは肩を怒らし大声で訊ねた。

「ここに赤い髪の女来なかった?!」
「えぇ、来ましたよ」
「どっち?!」
「え?」
「だからどっち行ったの、アイツは?!」

腰に手を当て物凄い剣幕で顔を寄せられた。
アンコさんと僕の顔の間に挟まれた空気が数気圧上昇したみたいに僕を圧迫する。
ついのけぞってしまったけれど、胸倉につかみかかられなかっただけ幸運だったと思い直した。
僕はニッコリ微笑み、質問に答える。

「彼女なら」

スッと森を指差した。

「右のほうに駆けて行きました」

僕は赤目の名無子が去っていった方角を迷うことなく教えた。

「そうか、でかした!」

顔を輝かせ、アンコさんは僕が告げた右手の森へ一目散に走っていく。
そして――。
それから二分と経たぬ間にアンコさんが再びここへ戻ってきた。
もちろん、一人ではない。
先ほど逃げて行った名無子を同伴しての帰還だ。



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