ハツカネズミに恋をする (ページ1/16)
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絵を描いていたときだった。
天気のいい日で、野原の端っこに腰を下ろしていた僕は不意に左のお尻がモゾッとして、手にしていた絵筆を止めた。

なんだろうか。

スケッチブックを脇に置き、自分自身も腰をずらす。
すると、今まで僕の座っていた場所の地面がモコモコモコッとモグラがいるかのように動いたかと思うと、

ボコォッ!!

勢いよく土が隆起した。

「ぷはー!」

土くれを舞いあげて、地面に開いた穴から一人の女性が顔を出した。
その女性は、両手を草地に置くとそこを支えに、

「よっこらせ」

と、体を押し上げ、少々目を瞠る僕の前に軽々と飛び出してきた。

誰だ、この人。

僕は目の前に立つこの得体の知れない女性をマジマジと眺めた。
赤い髪を無造作に後ろで縛り、色白な部類に入る肌は今は頬に土がついて汚れている。
その上にある瞳は赤茶色で、こんな風貌の人、僕の記憶には心当たりがない。
初めて見る人だった。
おそらく土遁でも使っていたのだろう、土の中からいきなり出てきた彼女はその赤茶の瞳でキョロキョロ辺りを見回し、僕の他に誰もいないことを必死に確認しはじめている。



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