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俺たちが作り上げた作品は初心者に作りやすい湯呑みだった。
成形するときにいろんな作品の基本となるのがこの湯呑みの形で、これにアレンジを加え違うものへと作り上げていくのが普通とされる。
そのため、俺も陶芸が初めての名無子に湯呑みを勧め、これといって何を作るか考えていなかった名無子はあっさりと俺の言に従った。
しっぴきという糸で粘土の塊から切り離した作品は今度は乾燥させるために棚に置いておく。
一週間ほど乾燥させたら800度の窯に入れ8時間ほど焼き、その後に色付け、最後は1250度の高温で焼く本焼きを経て完成だ。
片付けも終え、エプロンもはずし、すっかり帰り支度も整ったところで、俺は名無子と一緒に乾燥棚の前に立ち、そこに置かれた二人の湯呑みを見つめた。

「あとの工程は俺がやっとくから。あぁ、色付け工程くらいはまた二人でやりに来ようか。じゃあ、それは声かけるよ」
「ありがと。ちゃんと出来上がるかしら? 焼きの段階でひびが入ったりすることも多いんでしょぉ?」
「うん、まぁね。でも大丈夫でしょ。それより、名無子……ハイ」

俺は先ほどバックパックから出し、手に持っていたものを名無子に渡した。

「あら、なぁに?」
「バレンタインのお返し。今日はホワイトデーだからね」

名無子がラシャ紙とリボンで可愛くラッピングされたピンクの包みを受け取り微笑む。

「嬉しいわ。開けてもいい?」
「いいよ」



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