嫌のち好き? (ページ4/10)
「今日バレンタインなんでよかったらもらってください、カカシ先生」
両手で捧げた箱は小さくても赤をベースにしたタータンチェックの包装紙で可愛らしくラッピングされ、クルクル巻きの細い金リボンが同色のシールで留まっている。
恥ずかしくて顔をあげられはしないが気配でわかる、カカシ先生はチョコの箱を見たのだろう、ニコニコ笑ってくれているみたいだ。
「教え子世代から貰えるなんて嬉しいねぇ」
言いながらカカシ先生の手が私の頭をポンと叩いた。
「ありがと、名無子。でも悪いんだけど、それ貰えないのよ。俺、チョコはひとつしか貰わないって決めてるから。ごめんね。気持ちだけ有り難く貰っとく」
あ、そうなんだ……とすぐに理解した。
ひとつしか貰わないというのはつまり本命からのチョコだけ受け取るということに他ならない。
そのくらいはいくら頭の悪い私でも充分わかった。
そっか……そうだよね。
カカシ先生はいっぱいモテるし、チョコをくれる人みんなから貰っていたら埒もあかないだろう。
第一好きな人や付き合ってる人くらいいても当然なんだ。
私みたいな教え子状態の後輩がチョコをあげたって断られても仕方のないことだった。
それを悲しいなんて言ったらずうずうしいかもしれないけど、やっぱりちょっとヘコみながら、でも顔をあげ明るく告げた。
「わかりました、じゃあ気持ちだけいーっぱいいーっぱい貰っといてください!」
カカシ先生が優しく笑ってくれる。
「あぁ、それはいっぱい貰っとくよ」
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