a meteor-1 (ページ5/8)
俺が名無子を連れていった場所は空を遮るものが何一つない小高い丘の上だった。
そこから仰いだ天空には幾万幾億もの星がまたたき、その中のいくつかが地上目指して駆け抜けていく。
それを見た名無子がいつも通り感情豊かに歓声をあげた。
「うわぁ〜!! これって流れ星でしょ?! 私、流れ星見るの初めてかも!!」
空を見上げていた俺はちらりと名無子に視線を落とし、再び頭上へ目を向ける。
「今ちょうど双子座流星群が見られる時期なんだ。年間に見られる流星群のなかでもかなり大規模なものだから、うまくすると一時間に百近くの流れ星が見られる」
「すごーい!!」
俺はスッと静かに天頂近くを指さした。
「ほら、あのあたりが双子座だ。双子座の頭部を中心に星は流れていく。ピークはだいたい二時くらいだからこれからだ」
「へぇー!!」
簡単な説明をしている間も、俺の指先をかすめ空からしきりと幾筋もの光がたなびき墜ちる。
名無子が俺を見上げてニッコリ笑った。
「キレイだね」
「そうだな」
名無子の笑顔に答えながら、あぁ、いいものだなと思う。
こんなふうに人に喜ばれるのは――いいものだな。
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