a meteor-1 (ページ4/8)
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約束の深夜1時、俺は名無子の部屋を訪れた。
二階のバルコニーからコンコンと部屋の窓を叩いて俺の来訪を教えると、名無子はすぐに反応した。
誰にも気づかれないように静かに窓をスライドさせ、俺の姿を認めるとあらかじめ玄関から持ってきていたのだろう、バルコニーに置かれた忍靴に手を伸ばした。
が、次の瞬間、名無子がフルッと震える。
季節は冬、真夜中の外気はずいぶんと冷え込み、吐く息を真っ白に染め上げるほどだが、名無子にはそれが予想以上のものだったらしい。
寒さに驚き首をすくめた名無子があわてて部屋の中からマフラーをつかみ、クルクルクルとロングのそれを首に幾重にも巻きつけた。
それから今度こそしっかりバルコニーの忍靴に足を入れる。

「お待たせ!」

忍靴も履き終え準備万端とばかりに俺を見上げ、名無子は暗がりの中、嬉しそうにニコッと笑った。
その顔に何と声をかけていいものか戸惑いながら、

「……よし、行こう」

無難な返事でやり過ごすと、俺は名無子に背を向けて、バルコニーの手すりを蹴りあげた。
駆けだした俺の吐き出す白い息は、先ほどの名無子の笑顔に動揺したのだろうか、いつもより熱を帯びている気がする。
それがいくつも夜の闇に流れてはその中に溶け込み消えていくのが見えた。





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