cheering (ページ7/8)
頬……?
ううん、違う。
唇に……触れてみたい。
引き込まれるように私のシャーペンを握る右手が麗麗としたネジの寝顔に伸びてゆく。
ゆっくりとゆっくりと距離を縮めて、そして……
トッ……。
ネジの唇に私のシャーペンの上端部が小さな接触を遂げた。
触れたか触れてないかわからぬほどわずかに接したシャーペンをすぐさま離したとき、ん……と声を漏らしてネジが目覚めた。
寝起きの気だるげな瞳が自分を覗きこむ私の顔をとらえ、ハッと見開かれる。
「悪い、眠ってた……!! 問題はどう……」
ネジが急いで私のプリントの上に身を乗り出し、そこに書かれている解を見てホッと頬をゆるめた。
「あぁ、出来てるな。一人でも解けたじゃないか」
「うん」
ネジに心配され、さらには誉められたことが嬉しくなり思わず微笑みながら頷いた。
それと同時に唇に触れたことには気づいていない様子のネジに胸をなでおろす。
「よし、今度はこの問題だな。これは少し難しいからわからないところは遠慮なく聞け」
居眠りしてしまったことを申し訳なく思っているのか、ネジは頬杖つくのをやめ、宿題用紙に顔を近づけるようにしてしっかりと中を見る。
先ほどよりも格段に縮まった距離にドキドキしながら私は問題を解き始めた。
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