over the dark (ページ14/15)
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俺はカカシと別れ、家へと駆け戻った。
クローゼットの中の引き出しを開け、指輪の箱を掴むと、すぐに家を出る。
覚悟なら、できた。
どんなふうになったって、俺が愛した名無子はいる。
今まで二人で作った思い出だってあるし、それはこれからだってまだ作っていける。
まだまだ笑いあって、愛しあう時間はあるはずなんだ。
そして、アイツが病に蝕まれ、本当に動けなくなったときは、俺はその思い出とともに名無子のそばにいようと思う。
どれだけ辛くても、支えていってみせると思った。

だって、そうやって、俺ら、支え合ってきたんだろう?
なぁ、名無子。
お前は指輪、受け取ってくれるかな。
俺の大好きな笑顔で優しく笑って、もらってくれるかな。

手にしたギフトボックスが、走る俺の足に合わせてコトコト音を立てている。
俺はカカシが教えてくれた住所へと、一歩一歩確実に近づいていた。
もうすぐ、この闇から抜け出せる。
お前がいなくなって、俺はずっと黒い闇の中にいた。
限りなく続く暗闇を、俺は突き抜けられずにいた。
でも、それを、今、

越えるよ―――。

あたりには、夕暮れあとの闇がせまる。
その中を、俺はありったけの力で駆けていった。
名無子のもとへ。
アイツに会いに行くために。
闇を越えた向こうにいる、名無子に会いに行くために。





for dear KUCHIRU.
20100701
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