over the dark (ページ13/15)
俺の体ん中が、名無子と過ごした日々の記憶で湧き立つようにいっぱいになる。
怒った日。
泣いた日。
スネた日も。
あきれた日も。
いろんな日があった。
でも、どんなことがあったって、アイツは必ず最後に笑う。
笑ってくれた。
俺の黒い闇を払拭する様に。
俺の前で。
名無子―――。
俺の耳にカカシの声が響く。
「名無子は病気からも、お前からも、逃げずにちゃんと向き合ってる。それもたった一人でだ。辛いなんてもんじゃないだろ。壮絶な苦しみだよ。でもな、そうなることがわかってても、名無子はお前を振ったんだ。どれだけお前のことが好きでも振ったんだ。この先、病気が進行して、お前に迷惑かけたくないからって、お前のことを一番に思って。わかるか、シカマル?」
カカシがその瞳に痛々しげな色を浮かべ、俺を見る。
「そんな名無子見てると、今のお前、ほんとムカつくんだよ」
俺はカカシの瞳から視線を逸らし、目を伏せた。
いつだって俺を一番思ってくれてた。
いっつも俺を優しく明るく包んでくれた。
そんなこと、カカシに言われなくたって、ずっと知ってたはずなのに。
俺、マジでガキだな……。
こんなにも自分のことしか見えてねぇーなんて。
アイツの思い、理解してやれてねぇーなんて。
俺はずっと閉ざしていた口を静かに開く。
「カカシ先生……ありがとな」
「シカマル」
俺は床から立ち上がり、衣服を軽くはたくと、ゆっくりとカカシに目を向けた。
ピタリとカカシに目を合わせ、まっすぐ射抜く。
「感謝、するぜ」
(ページ13/15)-13-
←|→ backselect page/15