over the dark (ページ9/15)
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今日も一人、付き合ってた女を振って、俺は家に戻ってきた。
変に疼く胸を抱えながら、寝室のクローゼットを開ける。
ほんの少し躊躇した後、アクセサリーを入れている引き出しをコトッと前に引き出した。
腕時計やピアスにまじって、小さな箱が置いてある。
俺はそれを手に取った。
キレイにラッピングされた手の平サイズの箱には、以前名無子に渡そうと思って買った指輪が入ってる。
何度も捨てようとして、結局今まで置きっぱなしだ。
そうして、何かあるたびに、俺はなぜか手に取ってしまう。

なんなんだろうな、俺。
バカみてぇーだ。

そんなふうに思うのに、俺は箱を離すことなく、ギュッと握りしめ、そのまま本棚へと移動した。
本棚の前に立ち、そこで俺は、あ、と思う。
もう何度目になるだろうか、今日もまた俺は、自分の探しているモノはここにはナイんだったと気づく。
俺がどんなに探しても見つからない俺と名無子のアルバム。
いつ、どこへやったのか、気付いた時にはなくなっていて、そのくせ俺はそのアルバムを手に取ろうと何度も何度も本棚の前に立ってしまってる。

ホントにバカだな、俺……。
アルバムなんて、もうどうでもいいはずなのに。
こんなに何度も、そんなもので何を見ようとしてんだよ―――。

手の中で小さな箱がズッと重みを増す。
俺はボックスを握る手に、グッと力を込めた。





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