君ニ捧グ-3 (ページ3/10)
一ヶ月の任務なんて、あっという間だ。
そんなの最初からわかってる。
でも、たとえ短くても、任務に出ないよりはずっとマシだ。
余計なことを考えないで済む。
そう思って、俺はあのとき、あわてて里を飛び出した。
それからひとつき。
俺は任務を終え、木の葉の里へ戻ってきた。
花屋でユリの花束を買い、俺はまず、いつものように赤丸と一緒にマリアの墓を訪れた。
墓の前に花を置こうとして、ふと気づく。
枯れ果てた花束がひとつ、片づけられることなく置かれたままになっている。
俺の他にも誰かがここに来て、花をそなえてくれたらしい。
そのことに感謝しつつ、俺はその花を近くの焼却炉に納めると、改めて自分の持ってきた花束をマリアの前に飾った。
「ただいま、マリア」
任務の合間合間に思い出されるお前の顔は、声は、以前にも増して淡くなった気がする。
思い出しすぎるのもつらいけど、思い出せないのも、また、つらい。
俺はそのつらさの中をひたすら走り続けてる。
『そんなに苦しまないでよ』
突然、頭の中に響いた名無子の声に、俺は一瞬ハッとした。
まただ、と思う。
名無子に惹かれてると知った日から、アイツの声が、顔が、ことあるごとに俺の脳裏を駆けめぐる。
それは滲んでいくマリアの姿とは対照的に、狂おしいほど鮮明に、鮮やかさを増していく。
あのときの唇の感触までがよみがえってきて、俺の体をしめつける。
俺は唇を噛みしめて、目の前の墓碑から目を逸らした。
その横で赤丸が俺の気持ちを切り替えさせるように、
「わん」
と吠えて、俺は赤丸に視線を向けた。
「あぁ、そうだったな。火影様に呼ばれてっから、そろそろ行かねぇーとな」
そう答えると、俺はマリアの墓を後にした。
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