アル・ワールド
ラブレター2 (ページ1/6)

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会わないでほしい。
そう伝えたくて僕は家を出た。
そんなことを言うために名無子の家へと急ぐ自分を当然頭の中の怜悧な自分は呆れたように批判する。
名無子が他の男と仲良くなるくらいどうでもいいのに。
友達になったっていろんな話をしたって、それで笑ったって、そんなのどうでもいいはずなのに。
どうしてこんなにも僕は、

キミの笑顔をその男に見られたくないのかな――。

胸を締めつけるような苦しさを抱え、僕は名無子の部屋へと辿りつくと扉を拳で叩いた。
ノックの音に反応して部屋の中からはパタパタいう足音が聞こえ、カチャッと目の前のドアが開かれる。

「名無子」

玄関先に立つ僕の顔を見て、名無子が驚きの表情を浮かべた。

「サイ。どうしたの?」

吸い込まれるように僕を見上げる名無子を真剣に見返して僕は口を開いた。

「行かないでほしいんだ。手紙の男に会いにいかないでよ」

名無子の上に降り注いだ僕の言葉は一瞬着地する場所を得られないまま目の前を浮遊して、その後徐々に名無子の中へとしみ込んでいく。
数秒かけてようやく僕の言った意味を理解した名無子が戸惑うように何本かの指先を唇にあてがった。

「え、あ……。あの……あがって?」

視線を揺らし、名無子はどうしたらいいのかわからないといった様子で僕を部屋へと招き入れる。
僕は忍靴を脱ぎ、名無子の後について部屋に入った。
その僕を振り向いて、名無子が恥ずかしそうに呟いた。

「ありがと、サイ。そんなふうに言ってもらえてすごく嬉しい。でもね」

ふっと彼女の視線が揺れを止め、僕の瞳をしっかりととらえた。

「私、会いにいくって決めたの」
「――」

ドクンと自分の心臓が跳ねるのがわかった。
名無子の会いに行くっていう言葉が僕の体に重くのしかかってくる。



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