アル・ワールド
マグカップ (ページ1/6)

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僕は雑貨屋の店内で、ひどく悩んでいた。

困ったな……。
どうしたらいいんだろう。

ここは木の葉の商店街に位置する雑貨店。
その店内にはキッチン用品やバスグッズなど日用雑貨がところ狭しと並べられ、思い思いの品を手に取る若い女の子たちでなかなかの混雑ぶりを見せている。
そんな女の子たちにまぎれ、僕はマグカップを前に途方に暮れていた。

まいったな。
どれを買おう?

目に映る様々な色やデザインのマグカップの姿に、僕は首をひねり続けた。
実は僕は、自分の家で使う名無子用のマグカップを買おうとしている。
僕の家には必要最低限の食器しか用意されておらず、箸にしても茶碗にしても、どれもこれも一人分しか置いていない。
それでも今まで困ったことがなかったのは、つまり、僕をたずねてくるような人が誰一人いなかったから。
ただ、それだけのことだ。
けれど、名無子と付き合いだして、彼女が僕の部屋に来てくれるようになった。
当然ふたりで一緒に何かを飲もうと思うけど、僕の家にはカップさえ、自分の分しかありはしなくて、正直、僕は名無子に飲み物さえ出せない状態でいる。
そんな話を名無子にしたら、彼女はいつものようになんてことナイ顔をして、

「気にしなくていいよ」

って、朗らかに笑ってくれたけど、でも、やっぱり僕はそれをどうにかしたくて、名無子に新しいマグカップを買おうと、ここでこうして迷っている。
しかし、どれを買ったらいいのか全く見当もつかない。



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