アル・ワールド
episode.14 (ページ1/1)

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走りよる根の忍。
そこから発される尋常でない殺気に気づいて名無子が振り向こうとした瞬間、男の、両手で握りしめられた剣が、まっすぐに名無子の胸を貫いた。
……貫こうとした。

ギシッ……。

「おまえッ……!!」

驚愕を抑えきれない響きの声に、僕は静かに告げた。

「さっき言ったはずだよ。失うのは絶対に嫌だ、と」

男と名無子の横から、僕は左手で男の剣の刀身を掴み、右手の刀でその首筋を押えこんでいた。

ギシッ……。

男が剣を動かそうとして、それが動かぬように僕はその刃をいっそう強く握りしめた。
手袋を突き破って、研ぎ澄まされた剣の刃が手のひらの皮膚を切り裂く。
そこから溢れる鮮血が、腕を伝って地に落ちた。
僕は金属質の冷徹な痛みとともに、腕を伝う血液の赤さと生温かさに、微かに鼻を突く鉄くさい匂いに、そして何よりも、名無子を守りたいと思うその感情に、自分が生きてるってことを妙に実感した。
グッと、刀を男の首筋にさらに力を込めて突き付ける。
僕は男が顔につけているその面を鋭い視線で見つめた。
男の絞り出すような声があたりの空気をかすかに揺らす。

「コレがお前の覚悟というわけか」
「……」

何も答えず、ただじっとその顔を見つめる僕に、男があきらめた様子で言葉を続けた。

「わかった。それほどの覚悟があるのなら、もう何も言わない。好きにするがいい」

男は僕らのやり取りを身じろぎひとつ出来ず見守っていた他の二人に、短く、

「退け」

と命令すると、彼らが森の中へ消え去るのを見届け、自分もジリジリと僕の刀から後ずさり始めた。
つかんでいた男の刀身を、力をゆるめて放してやる。
男は剣をスッと引き、背中の鞘におさめると、僕らの前からすぐさま姿を消した。





to be continued.
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