アル・ワールド
episode.12 (ページ1/4)

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「さぁ、帰ろうか」
「うん」

僕らは手を繋いで温泉宿を後にした。
空いてるもう一方の手に、僕はたいして何を使ったわけでもない名無子の大きな荷物を握っている。
昨日あのまま、僕らはひとつの布団で抱き合い、朝を迎えた。
キスもなにもしていないけれど、抱き合うだけで僕はすごく幸せだった。

幸せ?

僕は自分の体を満たす感情に驚く。

これが幸せっていう気持ちか。

実感の伴わない思いばかりだった僕にキミが芽生えさせていたモノはきっと、

そう。
感情って存在だったんだな。





森の中、整えられた道を行く僕の目に周りの木々の色が映る。
茶色の幹に、緑の葉。
風に揺れる枝の音が耳に届いて、僕は目をあげた。
世界が、色を、音を、その気配を取り戻す。
そんな世界を僕は目を細めるようにして見つめた。

この世界は意外とキレイだ。

初めて、そう思った。



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