アル・ワールド
雪ウサギ (ページ4/7)

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「何、その植物?」
「これはね」

しゃがみつつ、足元に鉢を置き、名無子が僕を見上げる。

「チェッカーベリーっていうのよ。かわいいでしょ、赤い実がついてて」

鉢にちょこんと植わった植物は、緑の葉に赤い実をつけた、ちょうど南天のようなもので、実の大きさは南天のそれよりも少し大きく見えた。
そのチェッカーベリーから葉を二枚と実をふたつ取り、名無子は得体の知れないかまぼこ型の雪塊に迷うことなく、くっつける。

「はい、できあがり」

名無子が白い息を吐き出しながら満足そうな声で言った。
その声は、先ほどまで身を縮めて寒がっていたとは思えないほどの元気な響きだ。
そして、明るく僕を振り返った彼女の足元には一匹の小さなウサギが姿を見せている。

「へぇ、雪ウサギ。上手に作れてるね」
「でしょー」

楕円形の雪の胴体、チェッカーベリーの葉っぱが耳で、赤い実を目にした雪ウサギ。
通常、南天で作るそれよりも目がぱっちりと大きくて愛嬌がある。

「うん、かわいい」

僕も名無子の横にしゃがみこんだ。
彼女の真似をして、雪ウサギを作ろうとバルコニーの雪を集めだす。



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