アル・ワールド
雪ウサギ (ページ3/7)

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窓の外では家々の屋根やその間にのぞく道など、いたるところに雪化粧が施され、白銀の風景を作り始めている。
きっとしばらくしたら辺りはまっ白になるんだろう。
まっ白な世界。
そう、ちょっと前の僕なら迷子になりかねないようなまっ白な世界に。
その何もかも飲み込んでしまいそうな虚ろな白さが目に浮かび、僕は思った。

でも。
今は名無子がいる。
だから、大丈夫だ。

窓外の景色から目をそらすことなく、僕は心の中で確かな自信を持って頷いた。
僕と一緒に降りゆく雪を見ていた名無子が不意に窓のカギをあけ、そのガラスをスライドさせた。
その瞬間、小さなバルコニーから外気の冷たさが入り込み、容赦なく肌を叩く。

「うッ、寒いー!!」

言いながらも、名無子は窓際にしゃがみ込み、バルコニーの部分に積もった雪を集めだした。
かまぼこ型っていうんだろうか。
そんな感じの形にしていく。

「何作ってるの?」

後ろから覗きこみ、訊ねると、返ってきたのはちょっと得意げな声だった。

「見てて、サイ」

一応、成形し終えたのか、彼女はいったん出窓のほうへと駆けより、そこに並ぶいろんな鉢植えの中から一鉢持ち出して、またこちらへと戻ってきた。



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