アル・ワールド
ラブレター2 (ページ3/6)

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名無子が手紙の男に会いに行くのは仲良くなるためなんかじゃなくて、僕とのことを伝えるため、彼の申し出を断るため。
それをようやく理解して、僕は自分の身勝手で浅はかな考えを思い知る。
そして、

「ごめん、名無子」

そんな言葉が僕の口をついて出た。

僕はいろんなものが欠けていてキミをいっぱい傷つけてるんだろう。
本当は誰よりも大事にしたいのに――。

「どうして謝るの、サイ?」

突然謝る僕に名無子は不思議そうに首をかしげ、それからちょっとだけ困ったように目を伏せた。

「確かにさっきはサイに言われたこと、ショックだった。少しは妬いてくれたらなぁなんて思っちゃったけど。でも、サイはこんなふうに止めにきてくれたから、それだけで充分」

はにかむように顔をあげた名無子が僕を見て明るく笑う。
誰にも取られたくないキミの笑顔。
僕の前だけで咲いててほしい花のような優しい笑顔。
それが曇ったのは、そうか、僕が妬かなかったから。

「これからは妬くようにするよ」
「なに、それー」

真面目に告げる僕の顔を名無子がおかしそうに笑い、僕は自分に向けられた名無子の笑顔に全身からホッと力が抜け落ちていく。
僕は名無子の肩に手を置いてその額にふわりと小さくキスをした。





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