アル・ワールド
ラブレター2 (ページ2/6)

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声を掠れさせながら僕は訊ねた。

「それは、僕がイヤだと言っても?」

それでも会いにいくの?

自分がわがままを言っていることくらいわかってる。
でも、その自分勝手な思いを我慢することすらできずに僕はキミの顔を覗きこむ。
それを名無子は何の迷いもなく見返して首を縦に振った。

「うん、会いに行く」
「……」

後悔って言うんだろうか。
胸の奥からは苦い思いがこみ上げて、僕の体を蝕んでいくようだ。
もっと早く名無子を止めていたら、手紙の男に会いに行くこともなく、こんな思いもしなくても済んだんだろうか。
為す術もなくただ名無子を見つめる僕を、名無子は明るいまなざしで見上げた。

「私ね、ホントは初め、会いに行かずに放っておけばいいやって思ったの。だけど、それはよくないなぁって。だって、手紙をくれて真剣に想いを告げてくれたんだもの、私もちゃんと答えなきゃ失礼じゃない」

そこまで言うと名無子がひと際強く光る瞳で僕を見た。

「だから会いにいってくる。会って、ちゃんと、私にはサイっていう彼氏がいるんですって言ってくる。ごめんなさいって伝えてくる」

名無子――。

キミの言葉にモノクロの靄で占められていた胸の中がパンッとフラッシュアウトした。
キイロい光の束が僕の体を、僕の世界を貫いて一瞬で明るく染め上げる。



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