アル・ワールド
マグカップ (ページ2/6)

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一体、名無子はどんなカップだったら喜んでくれるというのだろう。

僕は、もう何度目になるだろうか、先ほど棚に戻したばかりのシンプルな白いマグカップに手を伸ばすと、再びそれを手に取り、ジッと見つめた。
自分で使うものなら、どれでもいいと思う。
でも、名無子に使ってもらうものだから。
できれば、彼女の気にいるものを購入したい。
とはいえ、人の好みに合うものを買うというのは、僕にはひどく難しくて、

自分のなら、このあたりのシンプルなものを選ぶんだけど……。

そんなことを思ったとき、僕の背後から女の子らの話し声が聞こえてきた。
ふっと振り向くと、少し離れた場所の棚の前で女の子たちがマグカップを手に話す姿が目に入る。

「や〜ん、このカップかわいいんだけどォ」
「ほんとだ! あ、これ、別の柄もあるよ? ペアで使いたくない?!」

何の気なしにそちらの様子を見ていると、女の子たちは二種類のマグカップを持ち、散々迷った挙句、結局買わずに店を出ていった。
彼女らの見ていたマグカップが気になって、僕は二人がいた場所へと足を向ける。
そこで彼女たちが最終的には手離していったそれらを手に取った。

『このカップかわいいんだけどォ』

たしか女の子はかわいいものが好きなはずだ。

だったら、じゃあ、名無子もこういうのがいいのかな。

僕は、左右の手に一個ずつ持った、柄の違うマグカップを見比べた。
かわいくて、ペアで使いたいと、彼女らに言われていたマグカップ。
はっきり言って、僕にはその感覚なんてよくわからないけど。
でも、やっぱり名無子もあの子たちと同じように、そんなふうに思うのだろうか。





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