リアル・ワールド
episode.12 (ページ3/4)
彼女がいるから。
名無子がいるから。
僕はそれらすべてを、感情も衝動も、手に入れられたんだ。
そして、ようやく思えたんだよ。
僕にだって築いていけるって。
彼女と一緒に、この先に広がる鮮やかな未来を――。
僕は仲間の、面に隠れる素顔を見据えるように、まっすぐな視線を向けた。
「彼女は大事な存在だ。失うのは絶対にイヤだ」
「サイ……?」
僕の後ろで話の見えない名無子が戸惑いがちに僕の上着をきゅっとつかんだ。
そんな僕らを正面の仲間があきれた気配で見つめる。
「なるほど。それがお前の結論か。俺の忠告も無駄だったということだな。それならば仕方ない。その女、消えてもらう!!」
その声とともに三人が僕たちに襲いかかった。
「――ッ!!」
僕は持っていた荷物を投げ捨て、忍ポーチから取り出した巻物をバッと開くと即座に筆を走らせる。
「超獣偽画の術!」
墨絵の虎が数匹、巻物の中から飛び出していく。
相手は三人。
すべて根の仲間。
となると、僕が相手にできるのは二人が限度。
その攻撃を凌ぐので精いっぱいだろう。
しかも、名無子をかばいながらだと……僕はどこまで闘える?
いや、それよりも。
名無子を逃がさなければ――。
そう思ったとき、僕の背に名無子の背中がくっついて、名無子の凛とした声が耳に響いた。
「サイ。私も闘う」
「―――」
僕が背中越しに名無子を顧みると、名無子もこちらに顔を向け、僕に笑ってみせた。
強く、強く、何かを決めたように、名無子は僕に笑ってみせる。
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