アル・ワールド
episode.12 (ページ2/4)

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キミがいるからだ、名無子。
キミがいるから僕のまわりの世界にリアリティが溢れ出して、僕に自分の居場所を与えてくれる。
僕がここにいる実感を与えてくれる。

僕はとなりを歩く名無子に視線を向けた。
名無子になぁに? って目で見上げられて、僕がなんでもないよって笑おうとしたとき、ザッと近くの木から飛び降りてくるものがあった。

――ッ!!

息を飲む間もなく、僕らの前には昨日、姿を見せた根の仲間が立ちはだかっていた。

「手を切れと言ったはずだ」
「……」

男の冷やかな声があたりに妙に響く。
僕は名無子を守るように彼女を背に構えた。
でも、彼女のさらに後ろにも少し距離を置いて、やはり根の者が二人、僕たちを囲んで立っている。

「考える時間は十分に与えた。お前の答えを聞こう。その女との関わりを断つか?」

面越しに注がれる視線を、僕は冷静に受け止めた。

答え?
答えなんか決まってる。
そんな提案、飲むわけないだろう?

僕は男の問いかけに心の中で答えた後、ハッキリと言い切った。

「断る」

もうイヤなんだ。
あの真っ白な世界に戻るのも。
この世界のリアリティを失うのも。
取り戻した色も音もすべてが無に帰して、そうなったら、また僕は自分の存在感も居場所もなくしてしまう。



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