リアル・ワールド
episode.11 (ページ3/5)
電気を消した部屋で、僕らは布団に入った。
並べて敷いた二組の布団は、ピッタリくっつけるのはちょっと気恥ずかしいと言わんばかりに、ほんの30cmくらい離れて敷いてある。
その中で二人、おやすみを言い合って、僕は目をつぶった。
僕らを飲み込むように静けさがあたりを塗りこめていく。
そんな静寂に耳を澄ましていると、
「サイ、もう寝ちゃった?」
名無子の声がした。
「まだ起きてるよ」
閉じていた目を開けて僕がそう答えると、名無子がオズオズと呟いた。
「あのね、サイ……」
「なに?」
「手、繋いで寝てもいい?」
――。
僕は暗がりに沈み込む名無子の顔を見た。
そんなこと言われるなんて予測してなかった僕が何も言えずに黙っていると、
「ごめん、うっとおしーよね。なんでもナイ、忘れて?」
名無子はすまなそう声でそう言って、布団から出した手を引っ込めようとした。
その気配に、僕は慌てて口を開いた。
「うっとおしくないよ」
うっとおしくなんか全然ないんだ。
布団と布団の間に落ちている名無子の手を僕は急いでつかまえて、その30cmの隙間を埋めるみたいにきゅっと握った。
そんな僕の手を名無子もそっと握り返す。
そのまま大人しく眠ろうとした。
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