アル・ワールド
episode.11 (ページ1/5)

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キミといる時間はあっという間に過ぎると気づく。
この温泉旅館までの遠い道のりだって僕には少しも長くなんかなくて、道中いろいろ笑ったはずなのに、二人でどんな話をしてたのか具体的なことなど何一つ思い出せないくらい、一瞬に流れてしまった感じなんだ。
僕は白い湯気の立ち上る露天風呂で空を見上げながら、二人で過ごした今日という日をゆっくりと思い返していた。
今日一日、とにかく僕はずっとキミと一緒で、ここまで来るのも旅館の豪勢な夕飯を食べるのも、目を向ければその先に必ずキミがいてくれた。
そして、これからキミとともに就寝し、明日の朝、キミとともに目覚める。
そんなことが僕の心臓を簡単にドクドク言わせて、僕がここに存在してるってことを嫌ってほどうるさく訴えかける。
冷静な自分はこんな自分を情けないって突き放すけど、その理性を押しのけるようにすごく温かな靄が僕の体を満たし、溢れ出していく。
僕はさらに空の高みへと視線を投げた。
見上げた空は輝度の異なるたくさんの星が散らばっていて、ときどきフッと思い出したかのように流れ星が墜ちていく。
今も一つ星が流れた。

名無子も今、この星を見ているだろうか。

僕は今頃、女性用の浴場で日頃の疲れを癒しているであろう名無子の存在に思いを飛ばした。





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