リアル・ワールド
episode.04 (ページ4/5)
「何でもないわけない。そんな寂しそうな顔して」
「――」
寂しそうな顔?
僕は言葉を失った。
僕の作り笑いが嫌われることはしょっちゅうある。
けど、今みたいに寂しそうだなんて言われたのは初めてだ。
僕の偽りが、僕が誤魔化そうとする全てのモノが、キミには見えてる気がして僕の体が変にざわつきだす。
そのざわつきを振り切りたくて、僕は冷たく口を開いた。
「待ってなくて良かったのに」
顔をあげた名無子を僕は冷ややかに見下ろした。
「こんな何時間も待つ必要なんてないだろう? これだけ待たされたら相手に来る気がないって、いい加減気づくじゃないか。なのに、なんでキミは待ち続けるの?」
なんで僕を待ち続けたの?
名無子が僕から視線をはずして、不安そうに地面を見つめた。
「サイが迷子になりそうだから」
「迷子?」
「サイはいつも行き先を探して、どこか違う世界に迷い込んじゃいそうだもの。私がここにいれば、あなたをちゃんと待ってれば、サイもここに来ればいいって、行き先を迷わずに済むかなって……そう思うから」
だから待っていると言うの?
この僕を?
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