アル・ワールド
episode.03 (ページ2/2)

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ガーデニング市に、行くのをやめた。
僕は根の仲間が立ち去った玄関から部屋の中に戻ると、真っ白なキャンバスの前にしばらく立ちつくした。
生活感の薄い部屋のまん中で、僕の体温が音もたてずに冷えていく。

『余計なモノに気を取られるなよ?』

先ほどの男の声が僕の脳裏によみがえる。

余計なモノ?
そんなもの、僕にはナイ。
今まで通り、僕は任務が全てだ。
他に気を取られるモノなんて……。

そう思った僕の胸になぜか名無子の顔が浮かんで、僕はちょっと眉根を寄せた。

なんで名無子を思い出す?

整理のつかない僕の理性を叩くみたく、

『ハイ、指切り』

僕の小指に自分の小指を絡ませた名無子の姿が浮かんで、そんな残像が僕の中にトクリトクリと暖かな流れを生み出した。
僕の胸をいっぱいに満たしてく。

僕は名無子に気を取られてなんかいない。
気を取られてなんか……。
でも――。

彼女といると、僕の中に今までなかった何かが芽生えようとする。
それは確かなことで。
けれど、それはきっと僕にとってなんの必要もないモノなんだろう。

必要のない、余計なモノ――。
名無子も、名無子と一緒にいて生まれる何かも、僕にとっては余計なモノっていうことか。

僕は真っ白なキャンバスを見つめながら、いつの間にか親指の爪を噛んでいた。
それに気づいて口から親指をはずすと、僕は出かけるのをやめたかわりに絵でも描こうと、近くの机に置いてある筆に手を伸ばした。
筆を握ろうとして、でも、それをやめる。
僕は右足のホルダーからクナイを手に取り、白く空虚なキャンバスを斜め上から切りつけた。





to be continued.
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