昼の月
episode.07 (ページ1/6)

 bookmark?


ここでも見えるどうでもいい存在の昼の月。
そんなものを眺めながら、名無子は二人目の用人を始末したあと立ち寄った村の入り口でサイが戻ってくるのを待っていた。
手には赤い毛糸が一本、端と端を結ばれた輪っかの状態でかけられている。
それを両手の指で器用に掬いあげてやっているのは一人遊びのあやとりだ。
手元を見るわけでもなく集中している気配もありはしないのに名無子は次々と糸の形を変え、その手つきはずいぶん慣れたモノだった。

『仲間のキミが傷つくのは僕は嫌だ』

耳に残るサイの声に名無子は簡単に作り上げた箒の形をあっけなく崩した。

私に仲間などできるわけがない。
こんな平凡な自分に仲間など――。

名無子は心の中で吐き捨てた。
それがわかっているからこその根の配属なんだ。
上っ面の、不確かで信憑性の無い、時と場合によってその根本をたがえてしまうような概念など決して持ち得ぬ根という組織、そこでは任務完遂のために感情に左右されぬ正論がすべてだ。
誰もが仲間など作ろうとはしない。
だからこそ自分は根の忍としてここにいる。
仲間だの信頼だの、愛やら友情やらとは関係の無いこの世界に。





(ページ1/6)
-31-
|
 back
select page/92

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -