昼の月
episode.06 (ページ1/4)

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近くの村に立ち寄った。
サイが済ませたい用があると言ったためで、名無子は何を言うでもなくただ頷いて従った。
村の入り口は森から続く一本道の延長線上にある。
そこから村内に足を踏み入れると、早速サイは村の中心部へと向かい、特にやることのない名無子はそのまま村の入り口でサイの帰りを待つことになった。
サイが向かったのは村にある唯一の本屋だ。
村人に場所を聞き聞き辿りついた本屋は村自体が小さいので仕方ないがかなりこじんまりとした店構えで置いてある本もおのずと内容が限られていた。
それでもなんとかサイは目当ての書物を手に入れることができ、胸をなでおろして店を出る。
本屋を後にしたサイはもう一処、別のお店によって買い物を済ませ、それから名無子の待つ場所へと足を急がせた。
初めて入った村のよく知らぬ道に迷わぬよう辺りに気を配り歩いていく。
だがサイの頭を占めるのは目に映る村の道とは別に浮かんでくる映像だった。
それは脳裏に焼き付いている先ほどの名無子の戦いぶりだ。
よけられるはずのクナイを自らわざとその腕に受けた名無子。

自分は名無子がよけるだろうと思っていたからこそ、加勢もせず見守っていた。
なのに、結果はこうだ――。



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