昼の月
episode.03 (ページ1/6)

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何かヤバイ……。

傍に近づいてきた名無子の雰囲気にそんなことを思ったとき、

ザグッ……!!

サイの右肩に激痛が走った。
顔前の敵が目を見開き、グフゥッ……と小さな息を漏らしたかと思うと、自分のクナイを押し返す力が一気に消失した。
自分と男の体を銀色の平たい金属片が一直線につなぎ、そこを上から下へと赤い溶液がつぅッと音もなく伝っていくのが見える。
流れているのは、そう、サイの血だ。

名無子――。
僕ごと刺したか。

状況を把握した途端、再びサイの肩先が鋭い痛みに引っ張られた。
ゥグッ……と顔を歪め、自分の肩を押さえる。
苦痛に目を細めたまま見上げた視線の先では、名無子が手裏剣傷から血を流す腕でサイから引き抜いた刀を軽く振り、その刀身についた血のりを払って背中の鞘に収めている。
名無子の表情は乱れるでも喜ぶでも悲しむでもない。
任務を遂行するという方向にだけに向けられた淡々とした顔と眼差し。
その無表情さを目の当たりにしてサイはちょっとだけ何か懐かしさを感じた。





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