昼の月
episode.23 (ページ1/2)

 bookmark?


アジトの左側に建つ高い塔の天辺ではそこに監禁された名無子が三方を獣の唸り声で塞がれていた。
今までの拷問で疲弊しきった体は手も足も縄で縛られ、さらにはチャクラを練れないようにチャクラ止めの札まで貼られている。
そんな身ではけしかけられた野犬の攻撃を阻むのも限界があるというものだ。
もともと備わるバネを活かして跳んだり床に転がったりと野犬の牙を逃れていたが、それももうだんだんどうでもよくなってきた。
生きのびたところで自分の前には何もない。
あの男に捕まったからにはこの先ずっと奴隷同様の扱いでここに閉じ込められていくのだろう。
拷問と言う必要以上の痛みで生きてることは知れるけど、その状態で生きながらえたって根の歯車として任務に従事する今の自分以下の存在にしかなりえない。

だったら、もういいじゃないか、このまま野犬に食い殺されたって――。

壁を背にした名無子に右手の犬がグワッと飛びかかってきた。
思わず反射的に跳躍してしまったのは忍の性と言えよう。
そのまま名無子は体をひねり、野犬の横面を縛られた両脚の脛で蹴り飛ばす。
壁に叩きつけられギャンッと情けなく鳴いた野犬のそばから別の二匹が名無子に襲いかかる。
床に着地したばかりの体をコロリと前転させて攻めに転じようと構えたとき、

だったら、もういいじゃないか。

先ほど脳内に巡った声が自分の身に着いた忍の動きを止めさせた。

そうだ、もう、いい――。



(ページ1/2)
-81-
|
 back
select page/92

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -