昼の月
episode.18 (ページ3/4)

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期待なんかしてはいけないのだ、私みたいなつまらない存在が。
仲間だとか傷ついてほしくないとかそんな言葉に期待するだけ自分が愚かなだけだ。

それでもどこかできっと自分はあのサイって忍に希望を抱いていたんだろう。
今まで出会った誰よりもしつこくうるさく仲間仲間と言ってきたあの男に、自分はちょっとだけその仲間に入れてもらえるのかもしれないと淡い夢を抱いてしまったんだろう。
けれどそれはバカなことだ。
そうやって信じてみたところで叶うわけもないのだ。

平凡な自分が大事にされるわけなどないだろう?
なのに何を期待してるんだ。
期待なんかするから、ほら、また裏切られて、こんなにも自分は傷ついてるじゃないか。
こうやって見捨てられたことに――。

部屋の唯一の光源は壁の上部にある高窓だった。
はまりの甘そうな鉄格子が埋まった窓からわずかに外の人工的な灯りの光が漏れこんでくる。
その光に照らされながら、名無子はふぅっと蒼い目を高窓に向けた。
ここから見える景色は空ではない。
土の中に埋まったこの場所では壁の外に広がるものは土砂ばかり、自然名無子の目に映るものもそれだけだ。
空もない、月もない、土と岩しかないこの空間で名無子が生気のない瞳を静かに閉じた。
耳を塞ぐ、目をつぶる、膝を抱え、自分の体は底なしの潜在意識へと墜ちていく。



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