昼の月
episode.18 (ページ2/4)

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ドサッと体が放り込まれる。
名無子の顔に冷たい石の感触が広がった。
どうやら自分は拷問を終え、どこかの部屋に投げ入れられたらしい。
相変わらず手足は拘束されたままで、名無子は石造りの部屋の中で床の上に転がっていた。
チャクラを集めようとしてもうまく練れはしないことから、チャクラを封印する呪符はまだ縄で縛られた手首に張り付けられているようだとわかる。
正直もう動くのも面倒だった。
全身を苛む痛みは激しく、拷問から解放された今も引き続き棒か何かで打たれ続けている感じがする。
水責めと気つけに浴びせられた水のせいで頭から足の先までびっしょりと濡れ、その水分と床の冷たさが名無子の体から体温を奪い取り、動きも意識も鈍らせた。
名無子はブルッと身震いすると、ズリッ、ズリッと床の上を前進し、せめて体温ぐらいは確保しようと壁際に体を預けるようにして上体を起こした。

『あの時もお前は今日と同じように仲間に見捨てられてたなぁ。ほんと救う価値のない存在らしい』

耳に響くのはあの男の声。
その通りだと軽くいなしておけばいいはずで、今まで散々そうやってきたはずだった。

なのに自分はなにをこんなに痛いだなんて思うんだ――。

自分に助ける価値などないだろう、だからこそサイは逃げ、そしてそれは正解だ。
キミは僕の仲間だと言おうが、仲間が傷つくのは嫌だと言おうが、自分のような生きる価値のない人間にその言葉を言い続けられるほどやっぱりサイだってお人よしじゃない。



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