昼の月
episode.17 (ページ3/3)

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キリが真剣に名無子を見据えたまま、言葉を続ける。

「拘束トラップにかかったお前と仲間を殺そうとしたとき、お前のチャクラが暴走してここはひどい有様になった。建物は崩れ出し、周囲の地面がいきなり上がり始めたかと思えば土砂崩れを起こした。そのせいで一帯は土の中に埋まっちまったんだよ。それを俺は何年もかけて掘り起こし、ここまで再建したんだ」

表在化しないようにと無意識のうちに封印した忌まわしい過去の記憶が名無子の脳幹の中心部からジリジリとせりあがってくる。
当時の恋人とともにとらわれて、殺されそうになって、その恋人が自分を裏切って、そして。
自分は壊れ、ここを破壊し始めた。
名無子の思い出している映像が見えでもするようにキリはその恨みに揺れる瞳にさらなる狂気を浮かべて笑った。

「懐かしいだろ。あの時もお前は今日と同じように仲間に見捨てられてたなぁ。ほんと救う価値のない存在らしい。そんなお前を俺は長年忘れずにいてやったんだ、少しは感謝するがいい。そして、俺と再びめぐり合えたことをせいぜい神に恨むんだな」

そこでキリは言葉を切り、鼻の付け根、目頭部に獣が威嚇時に見せるようなしわを寄せて名無子を睨めつけた。

「これからあの時の礼をたっぷりさせてもらう」

土のドームに男の低い声音が反響する。
それは地面がその上に流れた血を吸収するように辺りにじわじわと吸い込まれて行った。





to be continued.
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