昼の月
episode.16 (ページ1/2)

 bookmark?


次々と打ちおろされる研ぎ澄まされた刃が、雨のようにサイに降り注ぎ、その体を貫いていく。
五本の金属刃がすべて容赦なくサイの体幹に突き刺さったとき、その光景に満足げな表情を浮かべた男たちの目の前で、サイの体がボンッと木片へと変化した。

「――ッ!!」
「チィッ、変わり身かよ!!」

下っ端の一人がキリを振り仰いだ。

「親分、ダメっす、逃げられちまいました!!」

その声に名無子が反応する。
キリの足に踏みつけられたまま、噛みしめていた奥歯をゆるめた。

逃げた……。

体の力が抜けていったのはサイが殺されずに済んだのだと安心したからだ。
それどころか、自分は大人しくしなければ女を殺すと脅されたサイが武器を収めたということに嬉しさを感じてさえいる。
一体何なんなんだろうか。
そんなことにいちいち呼応する感情など自分は持ち合わせていなかったじゃないか――。
しかし、同時にそういった心地よい気持ちとは別の、ひりつくような痛みにも襲われた。

見捨てて、逃げた……。



(ページ1/2)
-63-
|
 back
select page/92

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -