昼の月
episode.14 (ページ2/4)

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着いた場所で二人を待ちうけていたものは小さな村だった。
が、村はすべて火に飲みこまれていた――。
林が開けた位置から辺りは一面、見渡す限り火の海で、とうてい中に足を踏み入れられたものではない。
火の粉が炎のあげる熱気に押され、村の外にまで爆ぜ飛び、外周から中を見つめるだけのサイの頬を焦げ付かせた。
これが先ほどの空の赤さの原因か、とサイが熱い炎に照らされる瞳で目の前の空をも焼きつかせる炎上を凝視した。
内部に建っている家々はどれも火炎に包まれ、どんどん焼き崩れていっている。
その家で暮らす村の住人たちはどうなっているのだろう。
村の中に閉じ込められているのだろうか。
しかし、それを助けたくてもこの炎上ぶりでは何一つできることなどありはしない。
せめて村人たちが逃げていてくれるようにと願っていると、紅蓮に染まる村の中からバタバタと出てくる一団があった。
ところどころ着物を焼きつかせ、火の粉を振り払いながら現れた者たちはその数七人、山賊といった風貌の男たちだった。

「あちちち」
「今日もなかなかの収穫じゃないですか、親分?」

かけられた声に男たちの中心、ひと際体格の良い男が頷いた。

「そうだな、しけた村だからこのぐらいの稼ぎで限界だろう」

親分と呼ばれた男の周りではきっとその部下たちなのだろう、両手いっぱいに村から奪ってきたと思われる金品、食料の類を携えている。

「じゃ、早速アジトに戻りますかね!」

下っ端のひとりが言った言葉に他の男たちが呼応して、林のほうへと顔を向けた。
と、そこでようやく気付く。



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