昼の月
episode.13 (ページ3/3)

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岩のすぐ横まで行っても名無子は顔をこちらに向けず、サイも別段それを気に留めることもなく話しかけた。

「さっきはありがとう、助かったよ」

返される沈黙も充分予想のつくことで、サイはそのまま言葉をつづけた。

「それは……あやとり?」

名無子の手の動きをじっと見つめ、サイが、へぇ〜と感心の声を漏らす。

「うまいもんだね」

なめらかな所作で次々と姿を変えていく赤い毛糸はサイの目に興味深く映って見えた。
名無子の手の中ではしごの形が生まれたとき、サイは二コリと笑って告げた。

「僕もやってみようかな、あやとり」

名無子が作ったはしごをグシャリと潰した。

「次のターゲットを早く見つけて」

あやとりから視線をあげると名無子の棘ついた瞳に当たる。
今までの無関心とは少し違うどこか嫌がるような苛立ちの見える蒼い瞳にサイはわずかに首をかたむけ、それから素直に謝った。

「あぁ、ごめん。今、次の探査をかけるよ」

忍ポーチから巻物を出し、サイはバッと広げて中に手際よく動物の絵を描きだす。

「超獣偽画の術」

サイの声に紙面の生き物たちが一斉に飛び出して行った。





to be continued.
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