昼の月
episode.13 (ページ2/3)

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そうしたらサイの刀は砕かれ、サイ自身の体をも斧の餌食になってしまう。
それを自分はきっと見ていられなかったのだ。

だから男にとどめも刺さず、斧そのものを弾いてやったということか。

その考えにひどく納得のいかない理性が八つ当たりするかのように、名無子は男の筋肉質な体に異常な激しさで殴りこんでいった。

なんだって、そんなことを……。

『キミは僕の仲間だから。仲間のキミが傷つくのは僕は嫌だ』

頭の中をサイの声が響き渡って、名無子はありったけの力を込めた拳を男の胸に叩きこんだ。





サイが名無子を追いかけて来た時にはすでにターゲットの大男は始末されたあとだった。
地面に倒れ絶命する男の頸動脈を念のため確認したサイは動かぬ血管に安堵し、あたりに目を走らせる。
名無子の姿がどこにも見当たらない。
サイの両目がどこに行ったものかと探し求めて左右に動くが、どうやら彼女はその視界の範囲から抜け出た場所にいるらしい。
名無子の白みがかった蒼い髪の影さえ見えず、サイは森の奥へと足を踏み入れた。
木々の間をしばらくうろつき、ようやく近くを流れる川のほとりで岩の上に腰かけている名無子を見つけた。
手には赤い紐のようなものをかけ、しきりに指を動かし、その紐をすくい取っている。
静かに河原の石を踏みしめ、サイは名無子に近寄って行った。



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