昼の月
episode.12 (ページ3/3)

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信じられるわけがない、この現状を。
仲間をそんなもの自分には関係ないと一蹴していた名無子が、

なんで僕を……。

自分を凝視する視線に気づいたのだろう、名無子がサイへと目を向けて、そこでサイの黒い瞳に出くわすと彼女はハッと肌に纏う空気をどこか震わせ、顔を敵のほうへとそらした。
それからすぐに男の元へと駆けだしていく。
その様に、無意識ではあったみたいだ、と思う。
でも無意識であれ、名無子は確かに自分を助けてくれた。
味方を守ることよりも敵を倒すことを優先させる名無子がさっきの一瞬は敵を始末することよりも自分を助けることを選んだ。
サイを犠牲にして男の首を取ることが簡単にできたというのに、だ。

それをせずに助けてくれた。
名無子が僕を初めて助けてくれたんだ。

サイは地面に尻をつき、座り込んだ。

まいったな。

クシャリと片手で髪を無造作につかむ。
戦闘中だというのに笑みがこぼれ出てしまう。
たった一回の蹴りだ。
取るに足りないたった一回の蹴りなのに。

なんだって僕はこんなにも嬉しくなってるんだろう――。





to be continued.
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