昼の月
episode.12 (ページ2/3)

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サイが心の中で呟いた瞬間、背後からまたしても男の斧が襲いかかってきた。
弾かれたように振り向き、反射的に背中の刀を引き抜いた。
サイの目に重厚な斧がその金属の刃で空気抵抗をも巻き込んで迫りくる姿がくっきりと映し出され、サイは刀を身構えた。
それで男の斧を受け止めようというつもりだろう。
だが、これだけ巨躯の男が力任せに振り下ろす大きな鋼鉄刃を刀一本で受け止めきれるものではない。
ただでさえサイが常用するのは細身の刀身なのだ、刀が衝撃に耐えきれず折れることは目に見えている。

そうしたら僕の体も、真っ二つか。

どこか他人事といった風情で、それでもサイは自分に迫る斧の切っ先を見つめ、両手で支えた華奢な刀身を体軸と水平の横向きに構えた。
すると――。

ガッ!!

鮮やかな打撃音が上がったかと思うと男の手の甲に蹴り込んだ足底が見えた。
横に弾き飛ぶ巨大な斧、その衝撃に引きずられて派手に転がる男の体。
目の前に伸びた足から辿った視線の先に見えるのはまぎれもない名無子の姿で、サイは思わず息を飲んだ。

名無子……?
キミが……助けたのか、僕を?

スルリと足を下ろし、名無子が転がる敵の体を地面に片膝つくサイのそばから静かに見つめる。
その顔をサイは標的を仕留めることも忘れて見入った。



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