昼の月
episode.11 (ページ1/2)

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生きてる実感は傷の痛みだけだった。
目をつぶり、耳を塞ぎ、生きてる感覚までも消失した名無子には自分がはたしてここにいるのかどうかさえわからなくなっていく。
それを唯一思い出せる方法が傷の痛みであり、だからこそ名無子は痛みを必要としていたのだが――そのすべをサイが悉く邪魔立てした。
名無子が敵の攻撃を受けようとする度にサイは余計な援護を加え、傷を受けられなくしてしまう。
これでは自分が存在しているのかわからなくなる。
そう、わからなくなるはずだった。
なのに、自分はどういうわけか、今でも自分の存在感を手にしてる――。





また一人、無事にターゲットを仕留め、サイが辺りに散らばる忍具を拾い集めている。
名無子は倒れた敵のすぐ横で地面に刺さっているクナイを引き抜き、サイに無言で差し出した。
気付いたサイが受け取る。

「ありがとう」

何を答えるわけでもなくクナイを手渡してから、名無子がサイに訊ねた。

「アナタ、どうして根などにいるの?」

名無子が質問してきたという行為そのものに軽く意外そうな表情を浮かべたサイはすぐにニコリと笑顔を見せた。

「僕は感情がないからね。根に組み込まれる人材としてはちょうどいいと思うよ」
「感情がない? それにしては仲間が傷つくのは嫌だとか心配だとか普通に感情のある人みたいなこと言うのね」

あぁ、それなら、とサイがなんてことない顔をして説明をした。



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