昼の月
episode.09 (ページ5/5)

 bookmark?


「私のことより、自分の格好、どうにかしたら?」
「え?」
「アナタ、泥だらけよ」
「あ……」

言われてみれば確かにサイは、戦闘中にはねあげたのであろう、衣服のいたるところに泥土がこびりつき、ずいぶんな汚れようだった。
それをひとつずつ順番に叩き落としていくサイの前で、名無子は穢れの無いキレイな姿で見終わったビンゴブックをバックパックに仕舞っている。
名無子の忍服はいつもキレイだ。
泥や土で汚れることを嫌うのか、忍服をはたいて体についた埃を落としているところをよく目にする。
だが、その姿を見るたびサイは少しくらい汚れていたほうがいいんじゃないかといつも思う。
なぜなら汚れの無い名無子は生きる力の希薄さを感じさせ、変な無機質感を漂わせて見えるのだ。
それはどこか魂の抜けおちた人形のようで、だったら埃っぽくても泥んこでも汚れているほうがよっぽどいい。
そのほうがちゃんと生きている気がする。
ちゃんとここに名無子が生きてくれてる気がする。





to be continued.
(ページ5/5)
-45-
|
 back
select page/92

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -