昼の月
episode.09 (ページ4/5)

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サイがその黒く澄んだ瞳に力を込めてもう一度しっかりと名無子を見つめた。
目に映る名無子の背後には昼間の月の空虚な白が青い空にかかっている。
どことなく名無子に似ている真昼の月。
サイは地面に落ちているクナイの最後の一本を拾い、名無子の傍へと近寄った。
反射的にこちらを向いた名無子にサイが告げる。

「名無子は真昼の月に似てるね」

その言葉に一瞬、名無子の瞳が傷みの色を浮かべた気がした。
だが、それは気のせいかもしれない。
瞬きの後に見た名無子の顔はいつもと同じ感情のないものだった。

「それは、どういう意味?」

冷ややかで虚ろな声に問いかけられ、サイは困惑気味に首を傾げる。
どういう意味と聞かれても正直それはサイにもよくわからなかった。
ただなんとなくそう感じただけであり、うまく説明しろと言われたところでしっくりくる言葉も見あたらない。

「深い意味なんてないよ」

素直にサイが答えると、名無子は「そう」と頷き、サイに向けていた視線を音もなくはずした。
それから相変わらず無関心な顔でビンゴブックをパラパラとやりだす。



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