昼の月
episode.01 (ページ3/5)

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そんな状態で空を見上げると、まるで自分がこの空から引き剥がされていくような気がする。
剥がれたくないと望んでも決して掴んでいられぬ眩しい空。
ここはお前の居場所ではないからと自分は空に落とされたんじゃないだろうか。
青い天井との距離を広げ墜ちていく彼女の視界にふっと白い円が映る。
それは一面に広がる青の隅に儚く浮かぶまっ白な月だ。
絶望とも希望ともつかぬ真昼の月は空の青を脱色してできた白い染みに見えて、ちょっと自分の存在みたいだと思う。

自分もこの世界にできた染みのような存在なのだから――。

そろそろリミットだった。
背後に近付く地面の気配を感じ取り、彼女はネコのようにクルリと体の向きを変える。
建物前の荒れた草地に片膝をつく格好で着地し、ゆっくりと立ち上がった。
膝に付いた汚れをしっかり払ってから、彼女は腰の忍ポーチに手を伸ばし、中から一枚の紙を引っ張り出した。
四つ折りのそれを開き、目を通す。

集合時間に遅れる。

頭の中で冷静に呟き、彼女は紙から目をあげた。
もう一度、空の隅、白く浮かぶ月を見上げて、女はタッと走り出した。





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