昼の月
episode.08 (ページ4/4)

 bookmark?


怪我を早く治して任務に望んだ方が結果を出す時間も短縮されるだろう。
サイ自身、それを理解したうえでの提案に違いない。
理性は治療など必要ないに決まってると抗うものの、それも根の忍の任務第一という揺るぎない理念の前には屈服せざるをえず、名無子は浮かせかけた腰をもう一度地面に下ろした。

「わかったわ、その軟膏、塗っておくことにする」

サイが嬉しそうに二コリと笑う。

「いい選択だと思うよ?」

サイが今度こそ名無子の左腕に軟膏を塗り始めた。
その手つきは傷に配慮してとても優しく、軟膏はサイの手の甲で温まったのだろう、ひんやりすることもなく名無子の肌になじんでいった。
薬を塗り終えた傷口にガーゼを当て、その上からサイが包帯を巻いてくれる。
しばらくして、

「これでいい」

ほんの少し満足そうに声をかけられ、名無子は腕に目をやった。
網膜に映る、実にキレイに巻かれた包帯。
そこからサイの顔へと目を滑らせると、視線の先でサイがニコッと笑顔を見せた。
名無子の胸の奥底で、その中に溺れこんだ自分の体がゆさゆさと揺すられた気がした。





to be continued.
(ページ4/4)
-40-
|
 back
select page/92

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -