昼の月
episode.08 (ページ3/4)

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「手当は必要ないわよ。放っておけば治るから」
「ダメだよ、ちゃんと治療しておかないと」

サイが若干有無を言わさぬ響きを声に乗せ、名無子の顔を覗きこんだ。

「痛いだろう? そのままじゃ僕だって心配だから」
「心配?」

名無子は感情の浮かばぬ蒼い瞳でサイを見る。

またこの人はおかしなことを言う。
私のことなど心配するわけないだろう――。

もうこれは相手にするだけ無駄かもしれないと思った。
互いに根の忍であるとはいえ、どうやら自分たちは根本的に考え方が違うらしい。
だったらそのやり取りに関わらなければいいだけだ。
名無子が無言で立ち上がろうとする。
すかさずサイは声をかけた。

「ねぇ、その腕じゃ任務に差し支えるんじゃないかな」

目を向ければサイの黒い瞳が真っ直ぐに自分のことを見つめている。

「痛む腕じゃ、きっと任務を遂行するのに時間もかかるよ」

名無子にもその言葉が自分に怪我を治療させようとして言っていることはわかった。
でも、サイが告げたことも一理あるのは確かだ。



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