昼の月
episode.08 (ページ2/4)

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「ちょっと待って」

つかまれた手に名無子が目を向ける。
無言の名無子にサイが言った。

「こっち来て」
「何? 早く次のターゲットを探しましょうよ」
「その前にやることがあるんだ」

サイは近くの茂みへと名無子を連れて行く。
不審な顔で見つめていると、サイは「とにかく座って」と名無子を草地に座らせた。
サイもその前に腰をおろし、背中のリュックを地面に置いて中を覗きこんだ。

「キミの腕、そのままにはしておけないだろう?」
「……」

サイはリュックから新品らしききれいな本を取り出し、他にもいくつかの薬瓶を草の上に並べた。

「手当方法が書かれてる本を買ってきたんだ。あとそこに載っていた薬も。この三種類の軟膏を混ぜて使うと傷の治りが早いらしいよ。この本にそう書いてあった」

簡単に説明しながらサイはそれぞれの薬瓶から少量ずつ軟膏を取り分け、自分の手の甲でよく混ぜる。
それを塗ろうとサイが名無子の左腕に手を伸ばすと、名無子はスッと腕を引っ込め、あからさまに治療を拒んだ。



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