昼の月
episode.08 (ページ1/4)

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タタッと軽い足音がして、名無子はハッと自分の物思いから意識を戻した。

なんでこんなことを思い出したりしたのだろう、あんな古びた過去の記憶を……。

どこか軋みをあげる胸を抱えながら足音のしたほうへと目を向け、名無子は、あぁ、そうだった、と冷静に頷いた。
視線の先に映る色白の華奢な体の根の忍。
すべては、そう、この人がおかしなことを言い出したからだ。

「待たせてごめん」

謝りの言葉とともに自分のそばにやってきたサイを名無子は冷ややかな視線で出迎えた。
根に所属するくせに仲間仲間と言ってくるこの男は本気でそんなことを口にしているのだろうか。
いや、本気かどうかなど問題ではない。
それよりも生きる価値もない自分を前にその仲間と言う言葉をいつまで言い続けられるのか、そちらのほうが見物に違いない。

無理だと思うけど。

口中で呟いた声に体の奥底に沈んでいる自分がほんの少し醜く歪んだ気がした。
名無子は視界の中に浮かぶサイの顔からツッと視線を切った。

「じゃあ次の任務に行きましょ」

村の入り口から林へと伸びる道筋を辿りだしたとき、サイが名無子の手をつかんでクッと引っ張った。



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