昼の月
episode.07 (ページ6/6)

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愛だの友情だの仲間だの、そんなものを望んだところで凡庸すぎて生きてる価値もない自分には決して手に入らないものだと思い知った。
自分にはその現実だけでいっぱいいっぱいだった。
いっぱいいっぱいどころかろくに受け止められもせず、心の中で消化不良を起こす見たくもない真実からただ逃げ出したいと目をつぶり、耳を塞ぎ、膝を抱えてうずくまった。
そうして墜ちていくだけになった。
体の真ん中、その奥底に横たわる真っ暗な光の届かぬ水中の底辺に溺れるように墜ちていく。
そのうちに心は朽ち果て生きてる感覚までもが昇華した。
自分がここにいるのかわからなくなって任務で受ける傷の痛みで自分が生きてることを思い出すようになった。
その頃だ、名無子が根に入ったのは。
任務に感情の介入を嫌う暗部育成組織根は任務のみを共有する世界、任務を遂行させることだけを目的として、仲間のつながりや信頼なんていうものを掲げられることはない。
忍同士の干渉もそこでは到底有り得ない。
それどころか忍は組織を成す歯車のひとつであり、死んだところで誰に嘆かれることもなく、とっかえひっかえ別の忍が補充されて行くだけの代物だ。
特別な価値など何もないただの一兵卒、誰にでも代えのきく平凡な一兵卒。
丁度いいと思った、自分にはお似合いな身分だ。
名無子は暗部に入隊した。





to be continued.
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